マンションや住宅を購入する際、銀行に買主、売主、不動産仲介、銀行担当者が一同に介しますが、その中には司法書士も同席します。
「なんで司法書士も代金決済に立ち会うの?」
そう思ったことはありませんか?
これは専門用語で言うと「同時履行を確保」するためなんです。
例えば、八百屋さんでリンゴを買うとき、「リンゴ1つください」「はい、どうぞ!」ということで合意がなされ売買契約が成立します。売買契約が成立しましたので、八百屋さんはリンゴを渡す、お客さんはリンゴの代金を支払う、という義務を負います。その時、多少のタイムラグはありますが、リンゴを渡すのと代金を支払うのは同時にされます。
リンゴを先に渡して、翌日に代金を支払う、というになったら、八百屋さんとしてはリンゴを渡してトンずらされる危険性があります。一方、お客さんも代金は支払ったけど、リンゴは入荷してからとなると、代金を支払ってトンずらされる危険性があります。
ですので、売買は基本的に、物の引渡しと代金の支払いが同時の方がお互い安心というわけです。このことは売買される物が高額であればあるほど重要になります。
それと同じことが不動産の売買で言えます。
不動産はリンゴよりもはるかに高額ですので、代金の支払いと不動産の引渡しを、できるだけ厳密に同時にする必要があります。
しかし、ここで不動産特有の問題があります。
リンゴを買う時は、お客さんが八百屋さんからもらって買い物袋に入れたら、そのリンゴはお客さんのものだ!ということが他のお客さんから見て判断がつきます。お客さんの手元にあるわけですから。
でも不動産の場合は買主の手元にひょいっと置けませんので、買主でない関係の人は、その不動産が一見すると誰の所有者なのか分かりません。立て看板をすれば分かるかもしれませんが、そんなの簡単に書き換えられちゃいます。
そこで登場するのが不動産登記です。不動産の登記事項証明書・登記簿謄本を見ると、所有者が誰なのかが簡単に分かります。そこで、不動産の場合は誰のものか分かりにくいので、リンゴの売買と違い、法務局で登記の申請をして「私が買いました」 と記録しないと、自分の物だと主張できない、という制度になっているというわけです。
そうなると、不動産の場合は、売買代金の支払いと不動産の登記申請とを同時にしなければなりません。しかし、申請は法務局で行いますが、お金は高額なので銀行でやりとりした方が安全です。
なので、一般的には「売買代金の支払い」と「不動産登記に必要な書類一式」の引渡しを同時に行います。
その際、「不動産登記に必要な書類一式」をそろえるには、不動産の登記申請には細かい申請書を作らないといけなかったり、いろいろな添付書類が必要なので、なかなか一般の方には判断が難しいです。買主さんが、売主さんから、ぽんと渡されても判断できませんし、売主さんも何が必要なのか判断できません。
そこで司法書士が登場するのです(長かった!)。司法書士が買主さん・売主さんから書類を貰い、内容を確認し、集まった書類で登記申請が問題なくできるなと判断したら、売買代金の支払いの合図をします。取引が終わってすぐに司法書士は法務局へ行って不動産登記の申請をし、買主さんの名義にしてもらいます。
以上、こんな仕事をやっています。
司法書士が立ち会う理由でしたが、いかがでしょうか?